プロローグ1

 

本日は晴天なり:青空を見つめて

 

廊下を歩く音が聞こえる。場所はグランコクマの宮殿内。
金色の髪に、赤い目。そして蒼い軍服を着た、37にはとても見えない顔をした人がいる。
向かう先はただ一つ。謁見の部屋の真下、皇帝の私室だ。

「陛下」
部屋に入るなり、金髪の男、ジェイドは皇帝を呼ぶ。
「おお、どうしたジェイド?」
そしてこちらにも金髪の男、マルクト皇帝、ピオニーの姿があった。
彼もまた38になるというのにもっと若く見える。
「いえ、ガイを見ませんでしたか?」
「ガイラルディア?ああ、確かシェリダンへ行くとか行ってたぞ」
シェリダン。ここからだとかなりの時間を要する位置にある。
「そうですか。またアルビオールですか?」
「多分な。あいつもいろいろあるんだろう?」
まるで知っているかのように皇帝はしゃべる。
まあ、単純にふざけているだけかもしれない。
彼の場合8割方後者にあたるのだが。
「それでは帰ってきたらにしますか」
少し用事があった。3日後のことについて。
企画したのはガイなのだから、彼に一つ聞いておこうと思っていた。

後3日で彼も成人を迎える。
ただそれは生きていればの話。
彼は帰ってくると約束して、もうすでに2年。長い時間が過ぎていた。

「それにしても、ガイは熱心ですね」
玉座の裏手にある滝を眺めてジェイドは言う。

「最初に、誰よりも早くあいつを迎えに行きたい。
仲間として、使用人として、そして最高の親友として」

ガイのその思いを否定はできなかった。
確かに彼とは絶対に仲良くはなれないと思っていた。
傲慢で、世間知らずで、言い訳しかしない少年。
私の一番嫌いなタイプだ。
でも、彼は変われた。
自分の過ちを反省し、変わろうと努力していた。
気づけば、私も彼を頼り、信用していた。
それは確実に変われたことを意味している。
私の中にも彼と少しでも同じ気持ちが残っていたのが、正直うれしかった。
私もまともになってきている。
彼と同時に私も変われた気がする。

「そりゃそうだろ。なんたって大の譜業好きだからな」
ピオニーが横に来て言った。
「まあ、明々後日までになんとかしねぇと」
「そうですね。まあ、問題ないと思いますが。
でも陛下。絶対に帰ってくる保障はありませんよ?」
ジェイドは眼鏡を上げて言った。少し皮肉気味に。
しかし、ピオニーは妙に自身ありげにフンッと鼻を鳴らした。
「いや、あいつは帰ってくるさ。そんな感じがする」
「相変わらず、その自信はどこから来るのでしょうねぇ?」
そう言いジェイドは笑った。
いつもの呆れたような笑い方。
少しでも期待している。彼が帰ってくることに。

「それにしても、いい天気ですね」
「ああ。いい天気だ」

空は快晴。雲一つ無い青空が広がっている。
しかし、ジェイドの顔は晴れていない。少し物悲しい顔をしている。
「どうした、ジェイド?」
「?。何がです?」
「隠し事をするな。顔を見ればわかるぞ?」
顔に出ていることに気づかなかった。
「いえ、少し考え事を・・・」
彼には帰ってきて欲しい。
しかし、帰ってきたとしてもあることが起こる可能性がある。
それのためにも最後まで気が抜けない。
「小難しく考えんな。楽になれよ」
そう言ってピオニーはにっこり笑った。
そう言われても困る。帰ってくることを前提にすると考えざるを得ないのだから。
もう一度空を見上げる。
「ほーら、また難しい顔をする。それだからおまえは『可愛くない方のジェイド』なんだ」
「ブウサギと比べないでください。だいたい紛らわしいです」
「じゃあ、バルフォアとかネクロマンサー?」
「何も変わってません」
「よし!じゃあ、ジェイドで!」
「戻りましたね・・・それでは少しじっとしててください」
そう言うとジェイドは少し後退した。
そして右手を左手の上にのせる。
「・・・ちょっと待て。お前、何する気だ?」
「何って、お仕置きですが何か?」
彼の目に嘘はない。完全に目標を定めている。
「わ、悪かった。だからそれしまってくれ」
ピオニーは一歩下がって謝った。
それを見てジェイドは手を引き、右手で眼鏡を上げた。
「まあ、皇帝陛下を傷つけるまねをするつもりはありませんけどね」
そう言って少し笑った。しかし冗談に思えない。

「それでは、帰るとしますか」
ジェイドは外に向かって歩いていった。
「おう。またな」
ピオニーが応答する。
ジェイドは一瞬振り向いた。が、すぐに前を向く。
「はい。それでは」
扉がばたんと閉まる。

「・・・あいつ、だいぶ楽になったかな?」

ピオニーが玉座に座って呟いた。
彼が振り向いたとき、笑って見えた。
いつもの嫌な笑みではなく、心からの笑い。

「さぁって、あと3日か。俺は、どうするかな?」
誰もいない宮殿の部屋で自分に問いかけた。
あえてサプライズにはしってみる。
そんなことを考えながらまた空を見上げた。

「やっぱり、いい天気だ」

遠くに大きな鳥の姿。
小鳥の囀り、木々の音。
平和だ。

「・・・あとは、お前だけで完璧だからな」

どことなく呟いた。
そしてマルクト皇帝は部屋を出て職務に向かう。
3日後を楽しみにして。
この平和な世界を見つめて。

 

 

あとがき

あ、うん。ピオジェ。
ちなみにこのまま連載でいきますんで。
続きはけっしてピオジェではありません!!(断言)
ネタ的にはエンディングの後が気になったんで
勝手に自分の妄想でやってこうと思います。

途中からむりやり話を繋げましたが、気にすんなー!
単に「可愛くない方のジェイド」をウパラ様に言わせたかっただけ(笑)
アルビオール=空だからOK!

さあさあ、彼が出てくるまでまだまだ時間があるねぇ。
次は誰と誰にしようか迷っとります。アニフロ?ガイナタ?
とりあえずティアは最後ですから。

イメージは・・・・・なんだろう??(笑)
多分Do As Infinityの「本日ハ晴天ナリ」??
てか、タイトルどおり??